歩合制の賃金について


 本日は、歩合給制の賃金の計算方法をご説明させていただきます。

 歩合給制については、営業職の方々や、タクシー会社等、様々な職種で採用されていますが、実際に賃金計算をされる場合についての、割増賃金等は、分かりづらい部分が多いというのが現状です。

 

歩合制とは?

 

 歩合制とは、労働基準法27条では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定められています。

 

 これは、労働者が就業した以上は、その出来高が少ない場合でも、労働時間に応じた一定額の保障を使用者に義務付けたもので、労働者の賃金が低下することを防ぐ趣旨のものです。

 

 したがって最低保障給のない、いわゆる完全歩合給制や、フルコミッション制などは原則認められません。

 

 

月給制と歩合給制が併用されている場合について

 月給制と歩合給制が併用されている場合については、割増賃金の計算については、どのように扱えばよいかという疑問がでてくると思われます。

 

 

 実際に歩合給制で残業が発生している場合については

 

 月給制の額に月の所定労働時間で除した時間単価と、歩合給の額をその算定期間の総労働時間で除した金額をもとに計算した時間単価のそれぞれに割増率を乗じ、両額を合算したものを1時間当たりの割増賃金と、これに時間外の労働時間を乗じた額になります。

 

 

 

月給部分の割増賃金の計算

 では、まず月給部分の割増賃金の計算についてですが、まず下記の方法で時間単価を算出します。

月によって定められた賃金 ÷ 所定労働時間数 = 時間単価

 上記の所定労働時間数とは、年間休日によって月によって異なる場合があり、この場合は1か月の平均所定労働時間数になります。

 

 1か月の平均所定労働時間数とは、「(365日ー1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で算出し、これを12で割ったもの です。

 

 上記の計算で算出したものに割増率(1.25)を乗じて得た金額が1時間当たりの割増賃金になります。

 

 

 

歩合給部分の割増賃金の計算

 

 歩合給部分の割増賃金の計算方法についてですが、こちらは、以下の計算で1時間当たりの割増賃金を算出します。

歩合給 ÷ 歩合給の算定期間における総労働時間数 = 時間単価

 上記の時間単価に割増率(0.25)を乗じて得た金額が、1時間当たりの割増賃金となります。

 

 注意すべき事が、歩合給部分の割増率が0.25だという所です。

 これは、既に1の部分が歩合給の中で支払われているからです。

 

 

 

実際の例を元に計算

 

 上記の説明では、分かりづらいという方に実際の例で計算してみます。

(例)
・月給250,000円
・1日の所定労働時間8時間
・年間所定休日105日
・実働時間200時間(残業込)
・歩合手当300,000円

 

 まず、上記の例だと1か月平均の所定労働時間を算出する必要があります。

→ (365ー105) × 8時間 = 2,080

→ 2,080 ÷ 12箇月 = 173.3

 

 ここから、残業が26.7時間あることが分かります。

 これを元に月給部分の時間単価、割増賃金を算出します。

→ 250,000 ÷ 173.3 = 1,443(小数点切り上げ)

→ 1,443 × 1.25 = 1,804(小数点切り上げ)

 月給制部分の1時間当たりの割増賃金は、1,804円となります。

 次に歩合部分の時間単価、割増賃金を算出します。

→ 300,000 ÷ 200 = 1,500

→ 1,500 × 0.25 = 375

 上記の375円が、1時間当たりの割増賃金になります。

 そして、これらの算出した金額を元に(例)の従業員の方にお支払い頂く残業代を算出します。

→ (1,804 + 375) × 26.7 = 58,180(小数点切り上げ)

 

 この58,180円当月の残業代となります。

 よって給与の内訳については、

→ 250,000(基本月給)+300,000(歩合給)+58,180(残業代26.7時間分)=608,180円

 となります。

 

 


 

 この他にも、賃金計算については、思わぬところで、未払い賃金が発生している事が多くあるため、現在の給与規定、計算方法が正しいのかをしっかりと確認する必要があります。


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2022年01月07日